三日月の絆

序章

序章

紅葉が風に舞い散る中、その男性はただ佇んでいた。束ねられた長髪は幾分白髪が混ざっており、浅いしわが額に象られている。四十代半ばといったところか。

彼の眼前には粗末な墓石。石には性も、名も、戒名も刻まれておらず、研磨すらされていない。適当な大きさの石を地面に埋め込んだだけの粗雑な一品。鈍い光すら放たぬその墓石を見下ろし、自身にすら聞き取れぬ震えた声で、短い言葉を紡ぐ。

 残された時間は少ない。呪いは刻一刻とこの身を蝕み、獰猛に次の獲物を求める。

三年前、呪いにかかったのは母。血の繋がりは、次の獲物として自分を選んだ。ここで食い止めなければ、次は子どもが死ぬ。

それだけは、何としても避けなければ!

「……母様が命がけでつかんだ手掛かり、無駄にはしません」

 実母との別れを言うと、彼は背を向ける。吹き抜ける風に落ち葉が泳ぎ、白と黒の織り成す頭髪が揺れた。太陽の輝きは雲間に遮られ、暗い影となって道を照らし出している。

それは彼の行く末の暗示か。枯葉を踏み締め、彼は一人歩き出す。渇いた音だけが虚空に響き渡り、それに答えるものは誰一人としていない。

孤独な……呪われし者の孤独な戦いは、すでに始まっていた。