一話
一話
なつやすみの、せみがみんみん、うるさいときだった。
でも、そのときはくもりぞらで、せみのこえはきこえない。
だから、いえのなかにも、せみのこえはきこえない。
かわりにきこえるのは、おばさんのこえ。
どうしてそこによびだされたのか、ぼくはわからなかった。
おばさんが、おにんぎょうさんみたいなかおで、ぼくにこういった。
「貴方は、今日から分家の扱いとされます」
ぶんけ? なんのこと?
まわりのひとをみても、だれもこたえてくれない。
「今日から貴方は播磨昇ではなく、端山昇です」
つめたいめ。
こおりのように、かたいこえ。
くすくすと、わらいごえがきこえてきた。
ぴか! 外から光がさしこんでくると、どどどん! って、すごいおとが、おなかのなかまでひびいてきた。
しばらくすると、あめがぽたぽたふってきて。
「貴方は、本日より我が播磨の敷居を跨ぐ事は、許されません。早々に準備をなさい」
ぼくは……ぼくは。
このとき、わかったんだ。
……このひとたちに、すてられたって。
それがわかると。
ぼくはさびしくなって。
くるしくなって。
つらくなって。
どうしようもなくて。
あめのふる、はいいろのそとにはしりだした。