十話
十話
「ひっ!」
思わず小さな悲鳴をもらす。声が、声が聞こえたのだ。こんな時間帯に自分以外にいる人間なんて、用務員以外は……
「ゆ、ゆ、ゆ……」
幽霊、という単語が中々出てこない。恐怖の余り腰が抜けそうだ。ガタガタ歯根を鳴らし、鞄を抱きしめる。普段快活な顔は青ざめており、まるで病人のようだ。
だがしばらくすると司影はある事に気付いた。どうも声は自分に近づいてくる様子がない。一定の距離を保ち何かを読み上げている。読み上げている、というのは決まったリズムのもとで文が聞こえてくるからだ。テレビの幽霊がよく発する『オォォオ』という風に似た音ではなく、囁くような発音だが、不思議に良く通る声。
「誰の声だ?」
間違い無く人間。問題は、こんな時間帯に何をしているのかということ。人間相手ならびびる必要なんてない。と言うより、ここまでびびらせられたのはある意味屈辱的だ。もしコソ泥であったなら、しかるべき報復を自らの手でなさなければ。