三日月の絆

十六話

十六話

さてここから本題だ、と昇は椅子から身を乗り出す。

「『飛ぶ』、というのと、『浮く』というのを例にしてみるか。

星に重力が働くのは常識だ。でも、こういった『目に見えないもの』は常識として縛られにくいだろ? だから『魔術方程式』で一部分の重力を操作して空に『浮く』のは比較的簡単。炎とか、水、氷を操るのも『眼に見えない』原子が関係しているから、わりと簡単なんだよ。

では、『飛ぶ』という行為はどうなのか?

鳥のような羽根が体外に備えられていないのは、自分の体を見れば子どもでも一発でわかる。その『眼で見てわかる事実』は、重力云々よりよっぽど常識的だし、覆すのは難しいだろう? 

だから、魔術で空を『飛ぶ』のは難しい」

目配せし、司影が頷くのを確認すると昇は、『そゆこと』と言って立ち上がる。

(もっとも、原子はともかく、重力を操作するのは並みの奴じゃ出来ねえけど)

話がややこしくなるのでその一言は胸の中にしまい込む。

「うーんと、車で目的地に行くとするなら、精神集中はガソリンで、魔力はエンジン、方程式は目的地にいくための地図で、飾りつけとかゴチャゴチャしたのはタイヤなりワイパーってとこか?」

「お! いい例えだな。そんな感じだよ」