二十一話
二十一話
視線の先には仏頂面で腕を組む司影。
何がそんなに不機嫌なのか、と昇は訝る。
「……よくも昨日オレ一人だけ残して行ったな」
足早に歩き出す司影の背を見て、昇は不承不承納得し、
「勝気なくせに幽霊系統は苦手なんだよな……都合の良い時だけ女になりやがって」
司影の頬がさっと赤くなり、拳を握り締めると、
「あだぁ!」
「女性というものはとてもナイーブなものです。そんな事は口が裂けても言ってはいけませんよ、昇君。何故なら古来より女性という存在は男性がすべからく守り通してきたものだからです。男性が女性を傷つけるなど言語道断です」
グーで象られた軽薄男の拳が、後ろから昇の頭に振り下ろされていた。字久は床にしゃがみ込んで頭を擦る昇については問答無用で無視し、司影に微笑む。一言で表現するなら営業スマイル、といった笑みを。
「ですよね、司影君?」
字久の声は大きくはないものの、静まり返った廊下にこれでもかというくらい響く。しかし、第三者の声は聞こえてこない。司影は廊下の真っ正面を向いたまま字久に顔は向けず、返答すらしない。このリアクションにはもう慣れているのか、それでも字久は水素より軽そうな口を再び開いた。