三日月の絆

二十六話

二十六話

 司影は箸を止めて、思わず呟く。

これでは会話が筒抜けになってしまうではないか。

「お前のせいだよ、お前の」

「どういう意味だよ、それ」

 昇の返答に司影は怪訝そうに尋ねる。

「そんな顔してりゃ、誰だってひっそりする」

 行儀悪く箸で司影の顔を指差しながら、それではそんな状況で普通に会話をする自分は一体何者なんだろう、と昇は思わず考えてしまう。

「あいつのせいだ、あいつの」

 司影の言う『あいつ』が誰の事かはわかりきっている。名前を出すのは火に油を注ぐことよりも遥かに危険なので、昇はメンマをぽりぽりと食べているだけ。

「こんなんじゃ、話せる訳ないじゃないか」

 司影の呟きを聞いた訳ではないだろうが、しばらくすると周りが絶妙のタイミングでわいわいと会話をしはじめた。

騒ぎの中心には字久。昼食も取らずに席を代わる代わる跳び歩いているのだ。言うまでもなく、話し相手は女子。

 いくらか和らいできた司影の眼が再び切り上がりそうになる。