三話
三話
彼はのそのそと扉を開けて床にあぐらをかいて座り込み、壁に寄り掛かる格好で眼を閉じている。数秒もすると、首がカクン、カクン、と機械的なリズムで動き、くーくー、と小気味良い呼吸が教師の怒りを無視して教室に聞こえてきた。
その後、生徒の失笑が教室に洩れたのは言うまでもない。
ぼりぼりと頭を掻き、昇は眠たげな眼で廊下を歩く。欠伸を一つつき、寂れた雰囲気の扉までの前まで来ると、その教室の戸を引く。
「うおっす……あだぁ!」
「先公怒らせたって何の得にもなんないだろ! 授業中居眠りして、嫌味な解答して、それから廊下で寝るなんてバッカじゃねえの!」
言葉使いは男性のもの。だが声音は女性のもの。
何の予兆もなしに走った頭部への痛み。それが原因で昇は両手で頭を抱えてその場にしゃがみ込んでいる。
昇は恨みがましそうな上目使いで、
「……いきなり何しやがる」
痛みの元凶を見上げた。
自分で切ったのではと思われる、肩の辺りで適当に切り揃えた黒髪、黒曜石を思わせる気の強そうな瞳。人目を引く中性的な美貌、と言っても良い……のだろうが、その服装が突飛過ぎた。いや、その服自体は突飛でも何でもないのだが、彼女がそれを着ると、突飛極まりない品物に変貌してしまうのだ。