三日月の絆

五話

五話

そっぽを向いて司影は答えるが、昇はたいぎそうに『あ、そ』と呟くのみ。

「そんなメンドくせえこと、よくするよな、お前も」

「……お前が怠惰過ぎるんだ!」

ゴン、と椅子に座る昇の頭をグーで叩くと、彼女は撫で肩をいからせながら退室していく。昇は叩かれた頭を擦りながら、

「何怒ってんだよ、あいつ?」

訝しげに首を傾げ、背を向けると、

「うげべぇ!」

三度頭に衝撃が走り、今度は自身の口から出たと思えない動物じみた悲鳴が耳に届いた。首の頚骨が一本外れたのかと錯覚するような圧力。

振り返ってみると一つの影が眼に入った。いつの間に入室して来たのか、頭を擦りながら昇は自分の頭を叩いた人物を見上げた。

「貴方が悪いです。乙女心というものを米粒ほども分かっていない。あれでは司影君があまりにも可哀想ですよ」

ステンレス素材の眼鏡、細面に剃刀のような双眸。わりと高めの上背が茶の薄いレザーコートを引き立たせている。

「聞いてたんすか、字さん」

「いいえ、筒抜けだっただけです。私は聞きたくて聞き耳立てていた訳ではありません。耳に音が聞こえ、それを情報として知覚した脳が言語に変換し、会話を聞かせるという行為になっただけの事です。私は悪くありません」